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snow contemporary
写真:肥田葉子
原口典之 個展「Circulation」
会期:2025年8月30日(土) - 10月11日(土) 13:00 - 19:00
*日・月・火・祝日は休廊
会場:SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
キュレーション:土屋誠一(美術批評家)
協力:HARAGUCHI LEVEL FIELD
オープニングレセプション:2025年8月30日(土)17:00 - 19:00


原口典之(1946-2020)は、1966年より美術家としての活動をはじめ、1977年国際展「ドクメンタ6」(カッセル/ドイツ)で発表した、《オイルプール》で世界の舞台へと鮮烈な登場をしました。巨大な鉄のプールに廃油を満たした渾身の作品は、工業素材に内在する重力と水平という自然現象を用いた独自表現であり、グローバル美術史にその名を残すことになりました。
原口は、物質の造形を主題としながら、人間と社会との関係を見つめ、繊細でありながら力強い作品を創りあげた作家です。原口は、物質そのものの美しさ、素材感、「つくらないこと」を追求しつつ、素材のもつ存在感を十全とせず、場の生成に介入するような作品を生涯制作し続けました。

日本における1970年代以降の現代美術のムーヴメントにおいて、代表的アーティストとして活躍していた原口ですが、没年の2020年に胃癌の余命宣告を受けます。
余命宣告を受けた原口は、作品発表の予定を目指すわけでもなく、限りのある生において、ほぼ毎日のようにミニマルな平面作品を手掛け、没するまでの3か月ほどの日々の中で、総数100点以上にものぼる作品を遺しました。
作品制作中の原口は、コンポジションを検討し、シンプルな形態が平面上に実現され、作品が完成する都度、岩手県北上市にある彼のスタジオ兼自宅の中庭において、原口とそのパートナーのためだけの「個展」が、毎日のように開かれたといいます。
それは、彼岸へと向かう残された生命のうちの格闘というよりもむしろ、形式上において終わりなき循環(circulation)へと向かう、生命感に満ち溢れた営みであったようにすら、理解が可能であるようにもみえます。

本展覧会は、国際的にも知名度の高い、この稀有な美術家の最後の日々の営みを、展覧会においてできるだけ忠実に再現することを目指します。会期中は、2週間ごとに展示作品をすべて入れ替える(平面作品17点、立体作品1点を3期に分けて展示)ことによって、時間の経過ごとにまったく異なる相貌を見せる空間をつくりあげます。そこでは、原口の最晩年の仕事を通じて、終わりなき生の循環という、オープンエンドな芸術作品の可能性が展望できるでしょう。

本展覧会は、この歴史的に重要な足跡を残した美術家である原口が、どのような芸術のヴィジョンを開示しようとしていたのか、原口の没後5年をきっかけに、その再考のための導入になることを願うものです。



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